新事業進出補助金などの補助金や助成金を不正受給した場合のリスクや罰則について

新たな取り組みや事業展開を後押ししてくれる「補助金」や「助成金」は、経費負担を大きく軽減できる心強い制度です。多くの場合、事業者が本来負担すべきコストの半額以上を公的に支援してもらえるため、積極的に活用すべき制度といえるでしょう。

しかし一方で、制度の悪用や誤った申請により「不正受給」と判断されてしまうケースも後を絶ちません。本記事では、補助金・助成金に関する不正受給の具体例から、違反時の罰則やリスク、過失による不正への対応方法、そして不正が発覚する要因までを詳しく解説します。制度を正しく理解し、安心して補助金・助成金を活用できるようにしましょう。

補助金・助成金の不正行為と不正受給とは?


不正行為の内容を知らなければ、自覚をせずに補助金や助成金を不正受給してしまう方もいるでしょう。まずは、補助金・助成金の不正受給にはどのようなものがあるのか知りましょう。


 

事実とは異なる虚偽の申請・報告をした


補助金・助成金を申請する際または事業終了後の報告の段階で、事実とは異なる虚偽の報告をすることは不正行為に該当します。事実とは異なる内容での申請は、たとえ採択を得られなかったとしても申請をした段階で不正行為としてみなされます。

補助金の虚偽申請・虚偽報告は、補助金制度全体の信頼を損なうだけでなく、本来支援が必要であった事業者のチャンスを奪ってしまうのです。


 

架空の経費を計上する・経費を水増しする


実際には発生していない経費を計上したり、かかった経費を水増ししたりする偽装は不正行為です。

以下のようなケースを参考にしてください。

・取引先に頼んで190万円かかった外注費に対して200万円の請求書を作ってもらう

・参加せず費用も発生していない研修セミナーの費用を計上する

このような不正行為を行った場合は事業者のみでなく、水増し請求書を発行した取引先も罰せられるでしょう。


 

二重請求・二重受給


同じ事業や経費に対し、複数の補助金・助成金を受け取ることは不正行為です。補助金・助成金は公募要領に併用不可の制度を明示しています。公募要領は補助金・助成金のルールブックであると考え、細部まで確認してください。


 

従業員の名義を借りる


実際には雇用していない従業員の名義を使い、補助金を申請する行為も不正です。例えば、実際の従業員より多く従業員がいると偽る・雇用契約を結んでいない相手の名前を利用するようなことをすると、従業員数の水増しとして判断されます。家族や知人に頼んで雇用を装う行為も同様です。


 

書類の改ざん


申請書類の内容を提出後に書き換える行為は、書類の改ざんだと判断されます。また、経費の発生日や売買契約の日付を偽ることも、改ざん行為に含まれます。


 

補助金・助成金を不正受給した時の罰則・リスクとは?


補助金・助成金の不正受給には、厳しい罰則が定められています。

この章では、その罰則とリスクを説明します。


 

補助金・助成金の不正受給に関する罰則


補助金の不正受給が発覚すると、補助金適正化法の罰則を受ける可能性があります。


【不正受給:補助金適正化法第29条】

・5年以下の懲役または100万円以下の罰金

・詐欺罪として刑事告訴される恐れもある


【目的外利用:補助金適正化法第30条】

・3年以下の懲役または50万円以下の罰金

・補助金交付決定取消・全額返金・遅延金の発生

※参考:厚生労働省「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」


 

補助金・助成金の不正受給に関するリスク


法的な罰則ではないものの、補助金・助成金の不正受給には以下のようなリスクが潜んでいます。

 

リスク

内容

違約金の請求

不正受給した金額に対して20%相当の違約金を上乗せした追加請求

遅延金の請求

不正受給した金額に対して3%程度/年の遅延金の請求

補助金・助成金の申請停止

不正受給後5年間は補助金・助成金の申請ができない

不正受給の公表

不正受給の事実と事業者名・事業主名・所在地などを公表

社会保険労務士などへの刑罰

不正に関与した社会保険労務士なども連帯責任を問われる

刑事告発

悪質な不正行為は刑事告訴される可能性がある


このようなリスクにより金銭的な損失のみでなく、事業の信用も失われてしまうのです。場合によっては、取引停止・融資停止などにつながる可能性があります。


過失で補助金・助成金を不正受給してしまった時には?


故意ではなく過失で補助金を不正受給してしまうケースもあります。例えば「確認不足により二重受給になってしまった」「対象経費を十分に理解せず対象外の経費を計上してしまった」などのミスがあれば、気付かぬうちに不正行為を働くことになるのです。


 

過失による不正受給は罰則に課されない可能性がある


故意ではなく過失により不正受給をしてしまった時には、罰則の対象にならない可能性があります。しかし、過失である事実を裏付けできる説明が必要になるでしょう。

不正受給の罰則リスクを負う可能性を考え、補助金・助成金申請時には応募要領を十分確認してください。


 

過失による不正受給に気づいたら迅速に返還手続きを進める


不正受給が過失でも、その事実に気がついてから何も行動をとらないままでは状況が悪くなる一方です。不正受給に気づいた時には、すぐに労働局や事務局に連絡をして必要な手続きを確認してください。

補助金の自主返還までの手続きが早ければ早いほど、返還以外のペナルティを負う可能性を低くできます。それでも、ペナルティがゼロになるとは限りません。


 

補助金・助成金の不正受給が発覚する要因とは?


補助金・助成金の不正受給はバレないのではないか?と考える方もいます。しかし、不正受給は以下のような要因で発覚します。


 

告発・情報提供


補助金・助成金の不正受給に気がついた周囲の人々または従業員からの告発や情報提供により、問題が明るみに出るケースは多いです。取引先や退職後の社員が通報をすることも珍しくありません。


 

労働局の抜き打ち調査


補助金・助成金を受け取った事業者は、労働局が抜き打ちでチェックをします。また、会社を通さずに従業員のみに調査を行うケースもあります。

抜き打ち調査時には、給与記録や出勤簿など事業の実情を細かく調査されるでしょう。


 

関連書類との不一致


不正受給で申請した書類の内容が過去の補助金・助成金の申請内容と異なる・矛盾している場合には、関連書類との不一致で不正が発覚します。


 

問題がある業者との関わり


悪質な業者が意図的に事業者を誘導して不正受給を行っていた時には、別の案件から調査が広がり問題が発覚する可能性があります。悪質な業者に騙されて不正受給という結果になってしまった場合でも、事業者の責任が問われます。


 

まとめ:新事業進出補助金などの補助金や助成金を不正受給した場合のリスクや罰
則について


いかがでしたか?今回の内容としては、


・補助金・助成金の申請や報告を偽る・水増しすることは不正受給になる

・補助金・助成金を不正受給すると罰則・金銭的な損失のみでなく企業の信頼も失われてしまう

・補助金・助成金の不正受給は、内部告発や抜き打ち調査などで発覚する


以上の点が重要なポイントでした。補助金・助成金の不正受給に関するリスクや罰則は重いものです。結果的に企業の信頼が失われる可能性があるでしょう。

故意・過失どちらにしても不正受給を働かないように、補助金・助成金の公募要領は十分確認してください。


 

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